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東日本大震災-再生に向けて-

災害復興は如何にあるべきか-自然エネルギーの全面的利用を-

大友はかつて、21世紀社会の課題は、「①全人類的課題(環境・エネルギー・食料・人口・核兵器)、②緊急不可避の課題(大規模災害・新たな疫病の蔓延)、③地域社会と地域産業再構築の課題(過疎・高齢化・食糧生産の場である地方の活力の低下)」であるとしました(1、2、3)。これらは、今日問題とされている「人類の生存に決定的に影響するに至った環境(エネルギー)問題」をとらえ直したものですが、更に、この問題を「私たちの生存の大前提をなす『食』の問題」として問い直す重要性を指摘しました(2)。

 

今回の災害はまさにこの3つの課題を合わせ持ち、かつ、「食」に直接重大な影響を与えるという点で、これまでのいかなる災害にも類例を見ないものとなっています。特に、大地震と大津波に加えて、原発の放射能災害が被さった地域には、かつて人類が経験し得なかった大きな困難が立ちはだかっています。

 

災害からの復興とは

災害からの復興は、何をさておいても取り組まれなければならない緊急事です。今回の災害は、津波を免れたが大地震の被害を受けている地域、大地震に加えて大津波に見舞われた地域、そして更に原発の放射能汚染を被った地域、の3つの異なった被災地の状況を現出しています。復興にあたっては、これらの被災地に共通する状況及び特殊な状況を考慮しなければならず、それぞれに復興のプログラムが異なります。

 

特に、放射能汚染地域の復興は、かなりの長期にわたって困難を極めることは、チェルノブイリ原発災害の状況から容易に推察できます。放射能汚染地域の回復を図ることは、緊急性をもつ重要事ではあります。しかし現実には、一度に4基の原発が災害を引き起こしているという前代未聞の事態に加え、原発の安定化の見通しも不明であり(最悪の事態は未だ終わっていない)、未だに放射能汚染の状況の把握が出来ないばかりか、放射能の放出が止まらず、土壌や海洋の放射能汚染が進行しています。従って放射能汚染地域の復興プログラムは、現時点で作ることは不可能です。では大地震・大津波を受けた地域の復興はどうか、と言えば、これも簡単ではありません。

 

災害からの復興は、そこに今後も居住して生活する人々の力とそこの「自然の回復力」とに依拠すること無くしてあり得ません。しかし前者については、今回の被災地の多くは、大地震と大津波が押し寄せる以前から、今日的な意味での地域問題(過疎・高齢化等々の地域社会の衰退)を抱え、地域経済が成り立たち得なくなっている、即ち地域に人々が生活するための条件が失われつつあったという現実があります。

 

そして後者の「自然の回復力」については、これは基本的には微生物から高等動植物に至る多種多様な生命体の連鎖に基づく環境浄化力のことですが、現実には山林の荒廃等々の環境問題の発現に見られるように、その力の低下は明らかです。更に加えて放射能汚染地域では、放射能によってこの「自然の回復力」が遮断されてしまっています。

 

地域経済を成り立たせるためには、人は自然に働き掛け、その自然からの恵みを得ることが必要です。この最も典型的なものが、食料の生産・確保や木材資源の確保です。この自然と人間との関係を理解しないことから、今日の環境問題や食料問題が生まれています。

 

私たちの祖先が生まれ育った環境(=故郷)は、農作物を生育させ家畜を飼養させることのできる農山村=田園でありましたし、また魚介類や海藻類の豊かな漁村=前浜でありました。田園や前浜には多様な生き物が生育し、それらと密接に結びついて成り立つ自然がありました。そういう意味では、この自然は、単なる自然ではなく、私たちの食料を得るための場=食料生産の場としての自然でありました。(1)災害復興とは、まさにこうした自然を回復させることにあります。

 

(株)NERC(自然エネルギー研究センター)では、「地域に人が住み続けるには、そこに仕事がなければならない」というあまりにも「単純な」答えを求めて、ここ10数年道内の自治体を中心に、それぞれの地域の自然エネルギーによる基本計画作りを行うとともに、自然エネルギー技術の開発も行い、その成果を地域社会・地域産業の再構築に活かすことを目指してきました。

 

この結果NERCでは、地域社会・地域産業の活性化に役立つ(町工場でも出来る)自然エネルギー利活用技術の特許・ノウハウ・ライセンス等々の産業財産権を確保してきました(表1)。産業財産権の確保を進めるにあたって、NERCでは、自然エネルギーを利用するためには、必ず技術手段を通さなければならないということを踏まえ、地域の地場技術としての実現に際しては、①地域固有の特性を生かした取組、地域の困難の解決に役立つ取組を基底に進め、②その地域特性に合わせて、ローテク技術で作れるもので、③小型分散型にして、数多く設置することを考え、④開発・製造、保守・管理の産業を幅広くかかえるようにし、⑤地場産業育成・振興を念頭に進める、ということを考えました。地域の活性化は元より災害からの復興には、こうした観点での具体的取組が必須であると考えます。(1,2,3)

 

<表1 地域社会・地域産業の活性化に役立つNERCが所有する産業財産権>

 

 

地域社会・地域産業の再構築としての「地域内経済効果」

地域社会・地域産業の再構築を考える場合、もう一つの重要な観点として、「地域内経済効果」特にエネルギーについて限定すれば「エネルギーの地産地消」の実現ということがあります。地域の宝ものである自然エネルギーを上手に使うことによって、「地域に仕事を作り出す」(地域産業を創造する)とともに、「地域内の富の循環を実現」し、地域が豊かになります。これは、これまでなかなか定着しづらかった「地産地消」を、「エネルギーの地産地消」として確実に定着させることになります。(3)

 

オーストリア・ギュッシング市(人口約4,000人)では、1991年段階で、域外に620万ユーロ(7億4,400万円、1ユーロ=120円として)、域内に65万ユーロ(7,800万円)が循環し、市税収入は40万ユーロ(4,800万円)でありました。1992年、域外に流出していた富を域内に振り向ける施策を採用した結果、2005年に、域外流出額ゼロを達成し、域内循環額1,360万ユーロ(16億3,200万円)、市税収入120万ユーロ(1億4,400万円)、そのほか、誘致企業数50社以上、新規雇用1,100件以上を実現しました。使用した木質バイオマスは年4万4,000tに上りました。(表2(a))(3、4)。化石燃料から地元産資源・エネルギーに転換することにより、域外に流出していた富がすべて地域内で循環するという結果となりました。

 

 

<表2(a) オーストリア・ギュッシング市における「地域内経済効果」>

 

北海道A市においても、昨年NERCが委託を受けて実施した調査結果で、有意な「地域内経済効果」を明らかにできました。市有ホテルでは年間6,300万円の重油代を支払っていますが、このうち地域内循環額は燃料取扱店に落ちる630万円程度、5,670万円は地域外に流出していました。ここに出力1,400kWの高効率ボイラーを導入した場合、燃料代が5,300万円、燃料化工場の売上が4、750万円、林地残材売上が1,600万円、そしてそれぞれの収益は、林地残材調達現場で160万円、燃料化工場で410万円、燃料取扱店530万円となり、その分が地域内に循環することになります。さらに同ホテルで燃料代1,000万円が削減できます。その分を伐採促進費用、ペレットボイラー導入費用、次期導入積立に充てることができるようになります。これらを総合すると、地域内循環額は以前の630万円から1億7,950万円に拡大します(表2(b))(3、4)。この結果は、全国全ての地域にあてはまります。

 

<表2(b) 北海道A市の市有施設への木質バイオマスボイラーの導入による「地域内経済効果」>

 

 

被災地の復興に向けて

さて、それでは大地震と大津波の被災地について、自然エネルギーの利活用を通してどういう可能性がみえるのか、被災地の問題点もしくは困難の具体的な解決方向を探ってみたいと思います。
まず第一に、地域の復興は、地域資源の再確認から始まります。即ち全ての被災地及びその近隣を含めた地域に“必ず存在する”自然環境と自然エネルギー=「地域の宝もの」の再発見(再確認)することです。どの地域にも地域の自然と一体化して存在する自然エネルギーとして、太陽・風(大気)・水・土とそれらに育まれて存在する生命体が存在しており、それに付随する自然エネルギーがあります。地域資源としては、これだけではなく、そこに定住する人々の存在及び地域内連携体制とそれを支える地域外支援体制の存在も重要です。また膨大な量のガレキの再資源化も、地域雇用を確保する視点で、十分時間を掛けて検討されるべきです。

 

第二は、存在する自然エネルギーの利活用の具体化ですが、これには、被災地の復興は、そこに存在する自然エネルギーを有効に使って、多様な生命体が蘇(よみがえ)る客観的条件を作り出すことに留意しなければなりません。地域資源としての、人間労働の投入及びあまねく降り注ぐ太陽エネルギーと森林資源等々の自然エネルギーの利活用による、土(田畑)・水(河川・湖沼・前浜)の「自然の回復力」による回復です。

 

この作業こそが、「地域に仕事を作り出す」(地域産業を創造する)作業です。この過程を進めるには、どのような「地域の宝もの」が、どのようにして付加価値を高め、地域を豊かにできるのか、前述した「地域内経済効果」がどう具現するのか、こうした点を検討することが大切です。

 

最終段階は、被災地の復興の中で、その地域を将来にわたって担う「地域の担い手」を育てる(育つ)ことで、これが何よりも重要です。これは、地域資源の発見、利用、効果の確認の全過程を仕事として進め、自らの生活条件の確立を果たしつつ、「地域の担い手」としての成長・成熟を果たし、その到達力によって地域資源の再発見、再利用、効果の再確認の過程を辿ることによって、一層充実した生活条件の確立を果たしつつ、「地域の担い手」としての更なる成長を行う、といった螺旋的発展の過程のことを意味します。復興支援はまさにこれを全うできる条件を整えることです。

 

 

このことを前提に、被災地の復興の青写真を描くと、図1のようになります。ここでは、大地震・大津波に見舞われた地域と更に原発の放射能汚染を被った地域の2つの地域の重層的資源の存在状況から出発して、表1に示したNERCの産業財産権を活用して、前節(表2)で紹介した「エネルギーの地産地消」=「富の地域内循環」を実現し、地域産業を定着させる=雇用を確保する(特に高齢者雇用を確保する)ことが可能になることを示しています。

 

林地残材の収穫や竹林の伐採、ガレキから燃料化できる廃木材の選別収集、早生樹木の植林、放射性物質選択吸収植物の栽培、放射能汚染海産物の収穫などのバイオマス収集は、差し当っては公共事業として行い、地元の雇用の継続的確保を保証し、エネルギー化の施設・機械装置は、小型分散型にして、数多く設置し、将来に渡って無数の保守管理の仕事が地域に生まれるようにします。このスキームを実現するインフラ整備の原資は、国の災害復興費及び東京電力の災害賠償金のほんの一部を基金とするだけで十分ですし、「地域内経済効果」を実現できますから、これまで地域外に流出していたエネルギー資源代を当てれば間に合います。

 

<図1 被災地に存在する太陽エネルギーとバイオマスエネルギーの利用技術の適用>

 

こうして地域産業・地域社会の復興に、自然エネルギーの利活用が重要な役割を果たします。その上結果的に、原発に頼らなくともすむ「地域内循環経済」が確立できます。原発を無くすためには、原発に替わるエネルギーを明確にできなければ、即ちエネルギーの生産手段として原発しか無ければ、危険を承知で使うことを認めざるを得なくなります。デンマーク、スウェーデン、ドイツ、オーストリア等々の欧州の国々は、地域に遍く存在する自然エネルギーを活用することで、原発からの撤退を進めています。そこに定住し続けること、地域社会の歴史と文化を子々孫々に継承するためにも、原発からの脱却が必要です。

 

(本文は、大友詔雄「自然エネルギーの全面利用による災害復興を」、住民と自治、自治体問題研究所2011年7月号に基づいております。)

 

1.大友詔雄:「自然エネルギーが拓く北海道の可能性-なぜ自然エネルギーなのか-」、開発こうほう、No.450、2002年。

2.大友詔雄:「エネルギー・環境問題の検証と今後の展望『自然エネルギーについて考える』」、日本科学者会議北海道支部創立40周年記念北海道科学シンポジウム、2006年。

3.大友詔雄:「環境・地域・自然エネルギーの利活用と地域経済への波及効果」、建設政策、第136号、2011年3月。

4.掘武雄:「エネルギーの地産地消 木質バイオで富の地域循環を」、ISM、15号、2011年5月。

5.大友詔雄:「原子力技術論」、全国大学生協連、1990年4月。

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