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知っておきたい自然エネルギー

第2講 世界の環境保全と自然エネルギーの到達水準

― 先進地ドイツを例に ―


1.環境・エネルギーに関する政策

 

①自然エネルギーの賦存量

  • 自然エネルギーの量は、例えば(理論的)発電可能量について見ると、現在の全世界で使用されている電力量15TW(テラワット:1TW=1012W)と比べると、太陽エネルギーで6,000倍、風力エネルギーで370倍も存在します。
  • 一方自然エネルギーの賦存量は、地域的に遍く存在するのですが、種別による地域差があり、地域固有のエネルギー資源としての利活用が望まれます。また世界の風力エネルギーの実測が、全世界8,000地点の観測値に基づき初めて明らかになりました。

 

②EUの環境・エネルギー政策と到達点

  • 各国の環境・エネルギー政策への投資規模を見ると、ドイツが大きく(1,000億ユーロ)、日本の3倍を越える額になっています。世界の地域ごとの再生可能エネルギー等への投資動向では、欧州地域が一貫して他地域を凌駕しています。
  • ドイツの自然エネルギー利用は、風力発電、太陽光発電、太陽熱集熱器の設備容量、固形バイオマス利用による一次エネルギー生産量及びバイオガス由来の発電量など全てについて世界のトップ水準を維持し(風力発電設備容量は米国、単位人口当りの風力発電設備容量ではデンマーク、固形バイオマス利用ではフィンランドが世界一である)、この水準には目を見張るものがあります。
  • ドイツの躍進は、1970年代から始まる一貫した環境エネルギー政策に拠っており、特に2000年から数次に渡る「再生可能エネルギー資源法」の制定、特に2009年の「再生可能エネルギー熱利用法」等の抜本的な諸政策のお蔭です。
  • 再生可能エネルギー源によって生産された電力を一定の価格で全量買い取ることを送電事業者に義務づけた「固定買取価格(Feed-in Tariff)制度」は、多少の差はあれEU諸国の定番となっており、この制度がドイツやスペインの最近の風力発電の隆盛の要因となっています。

 

③ドイツの環境・エネルギー政策と到達点

  • ドイツのバイオマスエネルギーは、全エネルギー消費量の17.4%を占め、多種多様な市場を切り開いています:具体的に挙げると、500 kWth以上のバイオマス暖房ステーション1,200ヶ所以上、木質ペレットストーブ23万台(10年間で23倍)、木質バイオマスボイラー14万台(10年間で48倍)、木質ペレット生産プラント40ヶ所(全生産量230万トン)、バイオマス発電所200ヶ所以上(2008年の発電量11.7 TWh以上、10年間で20倍)、バイオガスプラント5,300ヶ所(2008年の発電量は10.0 TWh、10年間で5倍)、バイオディーゼルプラント45ヶ所(生産能力は490万トン)、搾油機工場150機程度、バイオエタノールプラント9ヶ所(生産能力は88万トン)、年間売り上げ114億ユーロ、雇用者約10万人、CO2排出量5,840万トン削減(再生可能エネルギー全体では1億1千万トン程度のCO2排出削減)等々です。この結果木質ペレット価格も化石燃料よりも安く安定しています。

 

④デンマークの環境・エネルギー政策

  • デンマークは近現代の風力発電の先駆的役割を果たし、現在単位人口当りの風力発電設備容量は世界一です。
  • またバイオガスプラントの建設ではユニークな歴史を持っています。1960年代の高度成長期に、汚染物質が地下に染み込み、フィヨルドや湖沼の富栄養化・酸欠による魚類の大量死・井戸水の硝酸塩濃度上昇等が発生しました。そこで1970年代にバイオガス施設の設置が始まりますが、これはことごとく失敗します。1980年代になって、環境問題のクローズアップの中で、今度は共同バイオガス施設として再スタートし、住民・エネルギー供給会社(協同組合)・地域暖房会社(協同組合)・地方自治体の支援等々を得て、共同型の大規模なプラントの建設が全国15ヶ所で行われました。それが現在では、各地域に無数の小規模分散施設に移り変わっています。
  • デンマークの熱供給では、CHP(コージェネレーション)が70%以上を占め、石油はほとんど使用されなくなり、再生可能エネルギー、天然ガス、石炭で熱を生産しています。デンマークの電力供給は、火力発電が50%以下、残りを大規模CHP、小規模CHP、ローカルエネルギー等で等分し電力需要をまかなっています。

 

2.自然エネルギーの最先端

自然エネルギー技術の進歩には著しいものがあり、夢物語であると思われていたことが現実になりつつあります。ここでは、風力エネルギーと太陽エネルギーについて、顕著な技術的達成の事例を紹介します。

 

①風力エネルギー

  • 風力エネルギーの利用可能性は、洋上及び高度上空まで広がっています。洋上の風力エネルギーについては、海底固定式風車に留まらず、浮体式風車も考案され、更には洋上を風を求めて巡回して水素を製造する風車も提案されています。また高度上空の強風を活用する風車も考案されています。
  • しかしながら、風力エネルギーの真髄はオランダ風車にあることを忘れてはならないと思います。オランダ風車は現在欧州だけでも1,000基が300年以上使い続けられて、現在も尚地域の動力源として活用されています。恐らく機械装置で300年使い続けられているものは他に例を見ないと思われます。何故かくも使い続けられてきたのでしょうか。その理由は、オランダ風車は当時の美術建築家が競って設計した、正に美術品であったのです。それ故に、人々は日々眺め心が癒され、故障しても取り壊さず修理し維持し続けてきたからです。
  • かつてデンマークでは、風力エネルギーの普遍性(誰でも使え、独占されない)に根ざし、その利用には、地域資源・住民の利権財産として、地域住民が直接関与すること、即ち住民の主体的取組を重視し(1999年段階で全風力発電の80%以上が個人所有)、所有への居住の条件規程(投資の手段とすることを禁止、2年間以上の居住者に設置を認める)などの施策を講じ、風力エネルギーの生産手段は地域住民が所有することを明確にして普及を図ったのです。地域づくりでは、このことも忘れてはならないと思います。

 

②太陽エネルギー

  • 太陽エネルギー利用は、従来の半導体を使うパネル敷設型発電所の大規模化に加え、太陽熱利用も大規模に展開されるようになりました。太陽熱利用は、2つの側面(太陽熱発電と太陽熱の長期蓄熱)で著しい発展を遂げつつあります。欧州では、将来この太陽熱利用でエネルギー需給の事情が様変わりする可能性を秘めています。
  • 現在注目すべき革新的技術は、全欧州地域と北アフリカ地域に跨って展開している大規模太陽熱発電計画です。これは、MENA(Middle-East und North Africa)プロジェクトと呼ばれるもので、北アフリカの砂漠地帯など日照量の多い地域で、太陽熱によって生成される高温蒸気を使って蒸気タービン発電を行い、電気を欧州地域に送るというものです。パネル型太陽光発電に比べ、エネルギー効率も高く、寿命も長く、ローテクノロジーでつくれます。
  • 北アフリカの場合、同型の設備をヨーロッパ中央部に設置したケースに比べ、2~3倍のエネルギーを取得することができます。例えば、この太陽熱発電所を北アフリカの砂漠地帯に設置した場合、MENA地域の0.3%の集熱面積で、全北アフリカと欧州全域の電力がまかなえます。
  • 太陽熱の長期蓄熱技術は注目に値します。熱は通常冬期に大量に必要となりますが、この時期は日照量が少なく、逆に、熱をあまり必要としない夏期に、日照量が多く、大量の太陽熱が得られるという「ミスマッチング」があります。そこで夏期の大量に得られる太陽熱を、半年蓄熱して、冬期に使う「太陽熱の長期蓄熱技術」の実証試験がドイツや北欧の国々で行われています。しかしこの太陽熱利用の弱点は、熱循環に動力が必要なることで、この問題が厳しい技術的難題になります。そこで我々は、「無動力太陽熱利用システム」を考案しました(特許申請中)。

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