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知っておきたい自然エネルギー

第3講 環境保全と自然エネルギーの取組に必要な考え方

―理念的内容について―


1.自然エネルギーとは何か

①自然と自然エネルギ-の定義

  • 「自然エネルギー」、「再生可能エネルギー」、「クリーンエネルギー」、「新エネルギー」と、いろいろな名称で呼ばれていますが、これらは概念的には異るものです。「自然エネルギー」・「再生可能エネルギー」の定義は、物理的エネルギー(実体)に基づいていますが、「クリーンエネルギー」・「新エネルギー」の定義には、社会的・経済的評価が入っています。
  • 自然の構成要素には、太陽の存在の下、水・土・空気の存在があって、それらと密接不可分の関連をもって生命体の存在があります。自然は、これらの中でどの一つが欠けても成り立たないものです。そしてこの自然の構成要素それぞれにエネルギーの存在があります。自然エネルギーとは、こういった自然と一体化したエネルギーとして定義されるものです。

 

②自然をどう見るか

  • 「自然」(=「環境」)は、食料・飼料の生産の場としての自然(人間が手を加えた自然、即ち「加工された自然」)と人間が手を入れていない「原始自然」とから成ります。どちらの自然にしても、生き物が豊かに生育できる場でなければなりません。また、食料・飼料は全て生き物そのものあるいは生き物の介在によってもたらされます(食物連鎖)。
  • しかし今この自然がいろいろな意味で問題を抱えてしまいました。農薬、化学肥料の多用、ダイオキシン、環境ホルモンの氾濫、放射能の危険等々生き物の持続性を失うといった田園や前浜の環境破壊、更には休耕地・休田による食糧生産の場の荒廃、過剰な護岸工事、ダム等々による自然条件の人為的変更による生態系の攪乱等々、これらの影響は目に見えず、感知されない形で進行し、気づいたときは手遅れになるといった危険を内包しています。こうした荒廃した自然を元に戻す、あるいは健全な状態に保つには、放置するのではなく、人間が日々手を加え続けなければなりません。

 

③自然エネルギー技術

  • 自然エネルギーを利用するためには、技術手段の確立が必要です。現状でも無数の対応「技術」がありますが、化石燃料技術ほどの確立はなされていません。「技術」とは、科学的・工学的概念だけではなく、社会的・経済的概念でもあり、確立していないのは、科学的・工学的に確立していないことよりも、その「技術」を社会が必要としていないという、今の社会の価値観の方が大きく影響しています。
  • 技術手段としての実現に際しては、地域固有の特性を生かした取組、地域の困難の解決に役立つ取組を進めることが重要です。地域の固有性に根ざした利用は、その地域特性に合わせて、ローテク技術で作れるもので、小型分散型にして、数多く設置することを考え、開発・製造、保守・管理の産業を幅広くかかえるようにし、こうして地場産業育成・振興を進めるべきです。

 

2.バイオマスについて

①バイオマスの定義と「循環」

  • バイオマスとは、「生物資源量」(biomass)のことですが、間伐材や林地残材などの森林(林産業)系資源、稲わら・籾から・野菜残渣などの農業系資源、家畜のふん尿などの畜産系資源、漁滓やウロなどの水産廃棄物としての水産系資源、生ゴミなどの生活系資源、食品残渣などの事業系資源と多くのものが含まれ、その多くはこれまではやっかいなものとして捨てられるだけでした。しかし今、これらは地域産業再構築の重要な資源となっています。
  • 最新のバイオマスの定義では、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであって、微生物による生物分解可能な物質片を原料とするもの」(EU付属産業委員会)とされています。
  • この定義は、「循環」とはどういうことかを示すものです。「循環」とは、「自然から生まれたものは自然に戻る」過程に他ならず、循環するものを使う、循環しないものは使わない、「自然」に還すことができるかどうか、「自然」の中の生物的分解(生物(微生物を含めて)の食物連鎖過程)に組み込むことができるかどうか、ということを考えて行くことが大切です。

 

②森林(木質)バイオマス

  • バイオマスのエネルギー利用の面で最も安定・確実なものは、木質バイオマスです。木質バイオマスでエネルギー燃料の対象になるのは、林地に放置されている林地残材や小径木間伐材等の未利用物ですが、一番のネックは「集材コスト」が高くなることです。この問題は全てのバイオマスに共通の問題でもあります。この問題の解決が焦眉の課題となっているのですが日本ではようやく検討が始まったばかりです。しかしフィンランドでは、既にバンドラー技術を開発・導入して成果を上げています。
  • 北海道の木質ペレットの取組については先に紹介しました。問題点は需要の拡大にあります。需要が急速に高まらないのは、燃焼機器が石油系のものに比べて高価であり、且つペレット燃料自体の価格も安くはないとする「コスト」問題に行き着きます。ここから「コストダウン」の要請が出てくる訳ですが、重要なことは、この「コストダウン」と「地産地消」の考え方(その原則である「高付加価値化」)との両方を整合的に成り立たせることです。道内の生産工場は小規模地場産業であり、コスト競争に入り込むと本州や外国の大量生産企業に太刀打ちできません。追求すべき方向はコストダウンではなく、「安ければ良し」とする価値観からの脱却です。これを実現する方法は「地産地消型社会」を構築することしかありません。

 

3.将来展望

①地域循環経済社会の仕組みづくり

  • 木質ペレット生産地足寄町における検討で、全産業分野に及ぶ雇用創出効果が生まれる可能性を明らかにしました。林産業はもとより、農業、製造業、流通業、建設業、サービス業、観光、教育など全面にわたって可能性が開けるのです。これは今バイオマス燃料生産工場を中心とした「地域循環経済社会」を作り上げることと同じ内容を持っています。

 

②自然に還るゴミ・還らないゴミ

  • 「生命体を構成要素とする自然」では、「その自然から生まれたものは速やかに自然に戻る」、しかし「非自然に由来するものはなかなか自然に戻らない」ということの理解も重要です。
  • 特に日本の場合、資源を輸入し、加工・製品化し、外国に輸出するという仕組み(「加工貿易」)によって、私たちの生活そして国は豊かになりました。しかし、この「加工貿易」という仕組に、循環を考える場合の本質ともいうべき問題(上述の「循環」以前の問題)があります。資源を製品にする過程、あるいは製品を使い終わった時点で、必ず廃棄物が出ます。この廃棄物を資源の輸出国に戻してやれば、「循環」が成立するのですが、一方的に資源を輸入し、廃棄物も唯々国内に貯めるだけでは、「自然」の代謝能力の限界を超え、「循環」は成立しなくなります。
  • こうしたエネルギーや食料・飼料を外国に頼る経済・社会の構造をそのままにして、「クリーンな循環社会を」と言ってもこれは不可能です。エネルギーと食料・飼料の自給、地域社会で使用する分をその地域社会で生産する、使い終わったらその地域社会の中で処理・処分できるということ(分散型且つ循環型)でなければならないのは明らかです。これを「地域循環経済社会」と呼んでいます。

 

③地域社会の再構築を目指す基本計画・基本構想

  • 社会の仕組をどう作り直すか、着手すべき課題は、山のように多種多様にあります。必要なことは、個別技術の開発と同時に、地域社会の再構築を目指す基本計画・基本構想を作り上げ、その実現を促す地域社会の価値観を醸成することです。
  • 廃棄物は資源の宝庫であり、リサイクル資源の供給源であるとともに、可燃性廃棄物はエネルギー資源として、都市部の有力な電気・熱エネルギーとなります。このことが産業創出・雇用確保に結びつく例として、廃棄物処分場を地域社会の再構築の場とした、ドイツ・ルール地方の例は教訓的です。ルール地方はかつて炭鉱で栄えた地域であり、閉山後の新産業創出・雇用確保が大きな課題になったのは、北海道と良く似ていますが、その後の展開は全く違っています。ルール地方の州政府は、60年代後半、100 ha、高さ140mもの巨大なズリ山を根こそぎ削りオランダの干拓に運び、平地となった跡地に廃棄物を運び込み、以来30余年を経過して、周辺にリサイクル産業と廃棄物発電・熱利用産業を創出させ、地域雇用を確保しました。

 

④マイクロパワー(発電)技術

  • 小型・分散型のマイクロパワーのようなエネルギー生産装置に見られる新しい画期が到来しています。資本主義社会の高度な発展を支えた動力手段は、内燃機関で且つ蒸気機関ですが、今蒸気によらない動力が登場しつつあります。外燃機関であるスターリングエンジンや直接発電方式の風力発電や太陽電池、燃料電池などは、これまでの動力手段とは違っています。マイクロパワーは、自然エネルギーを利用するにふさわしいものであって、21世紀の中心エネルギーになっていくものと考えられ、地域に分散するメリットは大きく、設備・装置や利用形態の多様性から中小企業のニッチ産業としての展開も期待できます。

 

⑤水素エネルギー

  • 将来の新しい動力手段の主役は水素エネルギーとなるでしょう。例えば水素の発生は、水を電気分解して得られ、同時に発生する酸素は大気中に放出します。電気分解に必要な電気は、風力発電によって得るようにすれば、水素を発生させる過程ではまずクリーンになります。得られた水素をエネルギーに変えるには酸素と結合させてやればよく、これは化学反応ですが、ただ水を作るだけであり、水素エネルギーの利用は、水から水に戻すという過程で、正しく究極のクリーンエネルギー利用となります。21世紀の水素利用社会では、バイオマス資源を基礎に、水素生産・貯蔵・利用を実現する技術の全面開花が期待されます。
  • 2006年に英国のNPO法人EST(Energy Saving Trust)が発表した「2030年におけるマイクロコージェネレーション普及予測」によると、20年後にはスターリングエンジンが全体の75%を占め、燃料電池が約16%とされています。スターリングエンジンは、シリンダー内のガス(場合によっては水蒸気など)を加熱したり冷却することで、ピストン運動を起こし、動力を生みだすものです。加温の熱源としてバイオマスや太陽熱など何でも利用できることが大きなメリットです。我々も、一色尚次先生のご指導の下、全く新しい発想に基づく、バイオマスを燃料とした蒸気を用いたスターリングエンジン(SRSE:Steam-Rankine-Cycle-Stiring Engine)を開発しています(特許申請中)。

 

⑥おわりに

現在電力需要の多い地域は、北半球の先進国ですが、そこの電力供給のポテンシャリティは低く、逆に、今現在電力需要の少ない赤道付近の諸国は、電力供給のポテンシャリティが高い、という「電力需要と供給の地勢的分布図」は、我々に多くのことを暗示しています。

 

参考文献

◇大友詔雄:自然エネルギー利活用で「地域産業・社会の再構築」めざす、「議会と自治体」、第144号、2010年4月

◇大友詔雄:自然エネルギーが拓く北海道の可能性《後編》―北海道の新産業創出に向けたビジョン―、「開発こうほう」、No.450、2001年(平成13年)新年号

◇「【特集】北海道における自然エネルギーの現状と課題―バイオマスを中心として―」、「日本の科学者」、Vol.40、2005

◇大友詔雄:「『木質ペレット』で地産地消とエコの促進を」、「月刊クオリティ・ブックレット『うおんつ』」、Vol.76、2009年6月

◇(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構:「NEDO海外レポート」

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