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知っておきたい自然エネルギー

第1講 我が国の環境保全と自然エネルギーの取組の状況

― 地域の宝の再発見の事例 ―


1.自然エネルギーでどれだけ仕事が生まれるか

自然エネルギーの利活用による地域づくりは、地域にどれだけ仕事が生まれるか、ということで評価が決まるものと考えています。

 

①産業分野の雇用創出効果

  • 自然エネルギー産業における雇用創出効果の最も大きいものは、労働集約型関連分野が多岐に渡る木質バイオマス分野です。この分野の雇用創出効果は、化石燃料の4倍、原子力の13倍もあります。

 

②雇用創出の具体例

  • 1997年の「EUエネルギー白書」では、再生可能エネルギーによって、2010年段階で、EU内に167万人の雇用創出があるとの推計でしたが、これはほぼ2005年段階で達成されました。例えば、2005年の欧州委員会の調査で再生可能エネルギー部門は140万人の雇用を抱えていることが報告されました。
  • またドイツでは2004年に再生可能エネルギー分野で15.7万人の雇用が生まれ、3年後の2007年には24.9万人(55%の増)となり、その8割近くが風力発電とバイオマスで2分しています。

 

③最近公表の「雇用創出効果」

  • 2009年の欧州委員会は、2020年までに、再生可能エネルギー部門に約280万人の雇用創出があると報告しています。
  • 我国の新成長戦略の基本方針にある「新規雇用400万人以上」(2009年12月30日閣議決定)という報告を詳しく見ると、2020年までに、環境・エネルギー分野で、50兆円超の新規市場、140万人の新規雇用、医療・介護分野で、約45兆円の新規市場、280万人の雇用創出、合計400万人となっています。

 

2.環境保全はなぜ必要か

今年のメキシコ湾・石油採掘基地爆発・原油流出事故や1986年の旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故等これ迄の事例は、環境とはどういうものであるかを深く考えさせる素材ですが、ここでは少々視点を変えて環境を考えて見ます。

 

環境を考える場合の素材としての過去の事例

  • 今日のデンマークの環境を考えるとき、「環境保全には人間労働の持続的投入が不可欠である」ことを示したダルカス父子の植林の話を避けて通ることは出来ません。デンマークでは、1800年代の耕地開拓と森林乱伐採によって、森林面積は国土の4%以下に落ち込みましたが、ダルカス父子の植林を契機に現在約10%に回復しています。内村鑑三は聖書の言葉を引用しながら次のように紹介しています:「剣を打ち変えて鋤となし,槍を打ち変えて鎌となし,外に失いものを内にて取り返す」(イザヤ書4ノ4)(内村鑑三「デンマルク国の話」より)。
  • 我が国のドキュメンタリー映画「柳川掘割物語」もこうした例です。「江戸時代数百年にわたって、農民が堀割って用水路を築き,豊かな田んぼを作り,多くの生き物の生育する場を作り上げた。それが60年代の高度成長時代にヘドロに埋まってしまった。それを昔のような掘割に戻すために大変な努力が必要であった」という過程を綴ったものです。足尾銅山・別所銅山等の現在も、悠久の時間による自然の「回復」の過程となっています。
  • 一方日本の昔話「花咲爺の寓話」は、「至福譚」として知られていますが、『枯れ木に花を咲かせましょう』は循環の考えそのものです:犬の死→木の成長→臼を作る→薪→木灰→桜の枯れ木に灰をまく→満開の花・・・。
  • 「モアイ像」で有名なイースター島の文明の喪失は「食料問題」にありました。

 

以上の事例のように、多大な人間労働の持続的投入を行ってまで何故環境保全・環境回復を果たす必要があるのか、考えてみたいと思います。

 

3.環境保全・自然エネルギーの取組の状況

― 地域の宝の再発見の事例 ―


NERCでは、これ迄に北海道の40を越える自治体の自然エネルギーの利活用による地域づくりの基本計画を策定してきました。この中から幾つか具体的事例について紹介します。

 

①宝物の発見・再確認とその活用:「足寄町農畜林業連携構想」

  • 足寄町の事例は、日本中どこの地域にも豊富に存在する「宝物」であるバイオマスの活用による地域づくりの貴重な事例です。足寄では、町内で発生する全てのバイオマスの有効活用を検討し、その中で、畑作農業と畜産業と林業との連携を図る「足寄町農畜林業連携構想」を作りました。そして先ず最初に、木質ペレット生産工場を建設し、具体的に雇用促進を目指す取組を進めています。

 

②NERCの風力発電の取組

  • NERCでは、地方の町工場でもできる風車として、「山田風車」の開発者である山田基博氏のアイデアを実用規模で実現した集合風車を開発しました。
  • 更には、高齢化が進む漁業の町の自然エネルギーを活用した新しい町づくりとして、旧瀬棚町に日本初の洋上風車の建設を提案し実現しました。巨大な防波堤の内側の静穏海域内に風車を建設し、その基礎部を魚礁として、高齢者でも漁ができる栽培型漁場とする複合的利用を図ったものです。

 

③雪利用

  • 北海道の有数の豪雪地域である岩見沢市では、冬期の除排雪作業で集積された大量の雪山の自然融解水を使って、夏期に高齢者福祉センターに冷風を送る実証試験を提案し、7年に渡ってデータ取りが行われています。

 

④バイオガスの取組

  • 酪農王国北海道の乳牛のふん尿は、農家や地域にとってやっかいものでしたが、それをメタン発酵させて得られるバイオガスを利活用することを各地で提案してきました。夏場の余剰バイオガスを利用する方法が最も重要な課題です。

 

⑤木質バイオマス:木質ペレットの事例

  • 北海道で現在,木質ペレット燃料生産工場は17ヶ所を数えていますが、需要量の10倍もの供給容量となっており、地域内はもとより北海道全体の需給バランスを図ることが急務です。この状況を踏まえて、平成19年に、「北海道木質ペレット推進協議会」が設立され、現在、ペレット生産者・燃焼機器メーカー・流通業者合計40社が参加するまでになっています。北海道・札幌市等行政機関、北海道大学・道立試験研究機関等の支援を得て展開されているペレット産業の自立と発展を目指す取組です。

 

⑥木質繊維断熱材生産工場の建設

  • NERCでは、ドイツ・ホーマテルム社から国内製造と販売の独占的ライセンスを得て、目下欧米で急速な普及が進んでいる「木質繊維断熱材」の生産工場を、一昨年、北海道苫小牧に建設しました。

 

この木質繊維断熱材は、断熱性能はもとより、熱緩和・防音・防耐火・調湿機能など、木でなければ持ち得ない特性に加え、生産に必要とするエネルギーが他の建材に比べて極端に小さく、生産や廃棄の過程で廃棄物の発生もない等、住む人や作る人そして環境に優しい画期的なエコ建材です。また、地域の未利用の森林資源を原料とする「地産地消」製品であり、地域社会の活性化や森林再生にも貢献します。日本の断熱材市場規模から見て、また運送コストの負担を避ける点からも、全国各地の林産地に分散設置されるべきものです。

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